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Mar 20 2023

宇宙食 (パート 1)

近年、長期輸送用食品に関する研究が盛んに行われています。3Dプリント食品などカスタマイズが可能で、自分だけの食事を作ることができる種類の食品があることを考察してきました。それは、間違いなく、航空宇宙や軍事といった長期ミッションに対応できるものです。そこで、今回のブログでは、宇宙食、その加工・包装技術、ならびに宇宙食と廃棄物管理について考察していきます。

宇宙食とは?その加工・包装技術(3)

            宇宙食は、1980年代以降、宇宙飛行士のために、無重力環境用に製造・配合された特別食の一種です。通常の食事との大きな違いは、宇宙飛行士が長期宇宙ミッション中、健康を維持するために、栄養素をカスタマイズしていること、そして食べやすさです。栄養価の高い食事であること以外には、コンパクトで軽量、輸送や保管が容易、低圧、放射線、無重量環境などの過酷な条件下でも安定した性能を発揮する、といった特別な属性を持っています。

            宇宙食には様々な種類があり、再水和食品、温度安定化食品、中間水分食品、自然形態食品、放射線照射食品、冷凍食品、生鮮食品、冷蔵食品に分類することができます(5)。最も望ましいタイプは、フリーズドライ食品としても知られる再水和食品で、消費前に水分を補給するだけなので、軽量で保存や輸送が容易です。もう一つのタイプは中間水分食品(IMF)で、再水和食品と似ていますが、微生物の増殖を防ぐために水分を約20%から30%に保ちながらも、化学結合にはまだ有利に働くようになっています。IMFは、消費前の準備が要らないため、いつでも食べることができて便利です。 一方、他の種類の食品は、栄養価を保持できるような包装が必要で、多くの場合、重量が増してしまいます。例えば、温度安定化食品は、再水和食品の約4倍の重さです。

            これまで様々な加工方法が用いられてきましたが、航空宇宙食品加工では、要求される品質を維持できるフリーズドライ、3D食品プリント、放射線殺菌、マイクロ波補助熱殺菌(MATS)、超高圧殺菌(HPP)などが好まれています。例えば、フリーズドライは水分を極限まで減らして腐敗菌の繁殖を抑えるため、保存期間を長くすることができます。3D食品プリントは、必要な栄養素も宇宙飛行士各人それぞれなことから、その個人的な食事の好みや、健康状態にも関連してきます。殺菌は、照射殺菌またはマイクロ波補助熱殺菌のいずれかで、腐敗微生物を不活性化することを目的としています。両者の主な相違点は、照射殺菌は熱に頼らないため、食品の栄養素、風味、品質がほとんど保持されますが、マイクロ波補助熱殺菌は、熱による食品の品質や風味への損傷の度合いや可能性を低減するよう、通常、他の処理方法と組み合わせて行われることです。

            さらに、加工後の食品を最適な状態に保ち、栄養の劣化を抑え、酸素や水分の透過を制御するためには、適切な包装材を検討する必要があります。食用フィルム、レトルトパウチ、ハイバリアパッケージは、安全で健康的な食欲を提供するだけでなく、すべての条件を満たしているため、最も好ましいパッケージといえます。

宇宙食と廃棄の管理    (2,4)

            長期ミッションで十分な食料を管理することは非常に困難であり、宇宙船で食料を育てるにはエネルギーと水も必要です。そこで、科学者たちは、人間の排泄物を栄養価の高い食品に分解する、嫌気性消化の研究を行ってきました。この新しい発見は、まだ初期の開発段階ですが、嫌気性消化からメタンガスが発生し、有益な微生物(メタン資化性菌)がメタンガスを利用して動物飼料を生産することから、可能性はあります。故に、人間の食料としても発展する可能性が高いのです。

            長期宇宙ミッションでは、大量のゴミや食品廃棄物が避けられず、例えば4人の宇宙飛行士が1年間ミッションに参加すると、2.5トンもの廃棄物が発生することになります。現在、廃棄物の処理方法は、専用の宇宙船に保管して地球に持ち帰るか、大気圏で燃やすかの2つです。長期間ゴミを堆積することは、宇宙飛行士の健康状態に影響を与え、健康被害を引き起こす可能性もあります。NASAは一時期この問題に挑戦してきましたが、最も確実な管理方法はリサイクルです。高温の原子炉を使えば、廃棄物を水や酸素などの有用な資源に変えることができます。しかし、宇宙飛行士が持続可能な方法で生活することが重要であることから、NASAは昨年、3年という長期にわたる宇宙ミッションで、より優れた効果的な廃棄物管理ソリューションが使用できるかどうか、一般市民の協力を求めました(1)。先に考察したように、廃棄物管理は、持続可能な食品産業と生活様式のための鍵なのです。

            宇宙食は、さらなる研究開発が必要であることから、新規食品ということができます。まだまだ課題はあるので、宇宙食の新技術や将来の可能性については次回のブログ、宇宙食パート2で考察していきます。

参考文献

1.Clark, S. (2022). Nasa asks public to help solve waste recycling for Mars trip. The Guardian. Retrieved January 23, 2023, from https://www.theguardian.com/science/2022/jan/29/nasa-asks-public-to-solve-waste-recycling-mars-trip

2.Gabbatiss, J. (2018). Human waste used to make ‘Marmite-like’ food for astronauts. The Independent. Retrieved January 23, 2023, from https://www.independent.co.uk/news/science/astronauts-food-human-waste-marmite-iss-international-space-station-nasa-a8179451.html

3.Jiang, J., Zhang, M., Bhandari, B., & Cao, P. (2019). Current processing and packing technology for space foods: a review. Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 60(21), 3573–3588. https://doi.org/10.1080/10408398.2019.1700348

4.Lockhart, L. (2018). Waste Handling in a Microgravity Environment Challenge. NASA. Retrieved January 23, 2023, from https://www.nasa.gov/feature/recycling-in-space-waste-handling-in-a-microgravity-environment-challenge/

5.Raut, S., Hegde, S., Modak, S., & Bhande, R. (2021). Advancements in Space Food Processing Technologies. International Journal of Recent Scientific Research, 12(06), 42033–42037. https://doi.org/10.24327/ijrsr

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