ITO Thailand Hygiene Blog

Feb 21 2022

食品製造ラインでの清掃と消毒

            微生物だけでなく、アレルゲンや、高温で焦げた場合の発癌性物質、熱で劣化したタンパク質、残留化学物質等、食品工場内で避けたい物質を除去するためにも、清掃は大変重要です。こうした問題は重大な原因となりますので、清潔で安全な食品製造を徹底しなければなりません。これはまた、組織のイメージや、消費者の信頼、そして国内外の法に基づく基準にかかわるものともなります。したがって、食品製造工程に係わる一員としては、清掃・消毒工程について理解し、正しく実践しなければなりません。

            清掃を行う箇所については、リスク又は食品との距離に応じ、以下の2種類に分類することができます。

            ♦ 食品と直接接触する箇所 例えば、刃物、まな板、コンベア、従業員の手、作業台の表面、食品容器等。こうした物は、有害であったり食品と反応したりする材料であってはならず、耐腐食性があり、表面が滑らかで微生物や湿り気が堆積せず、キズが発生する作業に対して十分な強度がある等、基準を厳しく満たし、注意して選ぶようにしなければなりません。食品と接触する箇所は、常時、清掃・消毒を行う必要があります。

            ♦ 食品と直接接触はしないが、距離が近い箇所 例えば、テーブルの下、スイッチ、製品保管エリア、台車のキャスター、長靴、排水管、休憩場所、ロッカー等。これらの箇所は、上の箇所ほど厳しく管理するわけではありませんが、常時、清掃・消毒を行い、食品への汚染が発生しないようにしなければなりません[1]

清掃・消毒手順は、清掃と消毒に分類[2]

            清掃(Cleaning)の目的は、目に見える汚れ、油脂、残留化学物質、アレルゲン、その他避けたい物質を除去し、消毒プロセスが効率的にできるようにすることです。清掃は対象の種類や制約により、人が全ての部品・機器を取り外して清掃したり(Mechanical cleaning)、部品の一部を取り外したり(Clean-out-of-Place: COP)、部品・機器を取り外さずに清掃したり(Clean-in-Place: CIP)ということがあります。作業者は、特に、清掃を怠ってしまいがちな手の届きにくい機械・機器の隅に気を付けなければなりません。

            物理的な方法での清掃には、ブラシや布、その他で磨き、食品の焦げ、菌膜(Biofilm)、微生物の粘液、油脂、金属汚れ、埃等、表面上の汚れを除去するという方法があります。化学的な方法での清掃は、化学的性質を使用して表面の汚れを溶かすものですが、この方法は非常によく使用されています。清掃に使用する液剤は、以下の通り、汚れの性質によって異なります[2]

            油脂 油脂は水に溶けないため、水洗いでは除去できません。したがって、油脂の融解点より高い温度の湯に圧力を加えて洗浄したり、アルカリ性洗剤(detergent)を使用したり、又は、乳化剤(emulsifier)で油脂を乳化させ、水となじみやすいようにしたりします。がんこな汚れの場合は、複数の方法を合わせて使用します。

           タンパク質の汚れ 食品汚れのタンパク質には簡単に洗い流せるものから、非常に洗浄しにくいものまであります。タンパク質は加熱すると性質が変化し、汚れが固着してしまうためです。タンパク質汚れの清掃時には、強アルカリ性の洗剤や湿潤剤(wetting agent)を使用して溶かすようにします。

            炭水化物の汚れ 砂糖等、分子が小さく、水に溶解する物質の場合は、熱湯又は弱性の洗剤で溶かすことができます。分子が大きな物質、又は、複雑な構造の物質の場合は、アルカリ性の洗剤を使用して清掃します。

            塩・鉱物による汚れ こびりついた状態でよく見られます。塩は、水に溶ける種類もありますが、カルシウム塩やマグネシウム塩等の一部の種類の塩は、熱と酸で洗浄しなければなりません。アルカリ性の洗剤を使用すると、塩がアルカリに反応し、不溶性の重炭酸塩(bicarbonate)や石灰となってしまいます。また、一部の塩は物質の表面を腐食させたり、金属に錆を発生させたりするため、特に気を付けて清掃するようにしなければなりません。表面が腐食するとボロボロになり、汚れや微生物が入り込みやすくなり、清掃がしにくくなってしまいます。

            バクテリア、酵母、カビ等の微生物は、菌膜(biofilm)を作り、物質の表面にこびりつき、除去しにくくなります。したがって、清掃だけでなく、消毒液も使用し、菌膜の原因を排除するようにしなければなりません。

            現在では、化学物質だけでなく、清掃におけるバイオ的な手法の開発も行われています。例えば、菌膜除去に化学物質ではなく、微生物又は酵素(proteases、cellulases、polysaccharide depolymerases、alginate lyases、dispersin B、and DNAse等)を使用するなどです。しかし、こうしたバイオ洗剤の開発は、まだ研究中の段階です[3]

            清掃後は、微生物を許容範囲の量に減らすための消毒(Disinfection)を行う必要があります。ここでは、主に、病原菌、及び、製品の品質に影響を及ぼす微生物を安全な水準にすることを重点的に行います。これは、物理的な手法(熱湯、蒸気、又は熱風による温度)、バイオの手法(酵素又は微生物)、放射線使用(ガンマ線、パルス光、紫外線等)により行ってもよいですが、最もよく使われているのは、化学物質を使用する方法です。化学物質には、例えば、塩素系、ヨード系、オゾン、QACs(Quaternary Ammonium Compounds)、過酸化物、過酢酸(Peroxyacetic Acid)等がありますが、食品安全法の規定の下で使用しなければなりません。

            清掃・消毒は、非常に大切な食品安全の基本です。上手な清掃・消毒は、食品の基準を維持し、消費者の安全を確保する上で重要なことであり、これにより、市場競争力ができ、法の規定に従うことができるようになるのです。

            ITO THAILANDでは、安全な食品のあるタイ社会をサポートさせて頂いています。

参考文献:

1.Sullins M., Dice C. (2021). Demystifying cleaning and sanitizing of food contact surfaces on the farm. Colorado Produce Safety Collaborative.

2.Schmidt, R. H. (1997). Basic elements of equipment cleaning and sanitizing in food processing and handling operations. University of Florida Cooperative Extension Service, Institute of Food and Agriculture Sciences, EDIS.

3.Delhalle, L., Taminiau, B., Fastrez, S., Fall, A., Ballesteros, M., Burteau, S., & Daube, G. (2020). Evaluation of enzymatic cleaning on food processing installations and food products bacterial microflora. Frontiers in Microbiology, 11,

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